渋温泉かどや~旅館の無人チェックイン~

旅館再生のなかでも既存の施設を最大限に活用しながら新しい顧客を取り込んだ事例「渋温泉かどや」。簡単に滞在レポートさせていただきたいと思います。

まずもって既存の施設が複雑です。渋温泉は共同湯と宿が身を寄せ合うように建てられていますが「渋温泉かどや」もその一つ。特徴的なのは3つの独立した館がつながっていること。しかも地下を掘ってつなげている。そのため入口は二つありメインストリートにある渋大湯サイドにはスタンディングバーとしての入口があり、横湯川サイドにはチェックインとしての入口があります。再生後に主要顧客となったインバウンド客には「secret hidden passageway!!!」と喜ばれているとか。この複雑な建物を再生させたのが株式会社ヤドロクで、同じく渋温泉にある小石屋旅館も再生させた実績がある旅館運営会社です。

横湯側サイドのチェックインカウンター

チェックインアウトは横湯川サイドにある館(勝手にA館と呼びます)で行いますが無人です。いわば旅館のビジネスホテルスタイルですね。浴衣やアメニティはセルフです。では、緊急の用事はどうすれば良いのか…。内線電話は置かれています。ということは無人ではないのか…?はい。内線電話に応答するのはスタンディングバーにいるスタッフです。

渋大湯サイドのスタンディングバー入口

渋大湯サイドの館(勝手にB館と呼びます)の玄関周りがスタンディングバーになっておりバーを担当するスタッフが宿泊客の緊急対応をしているというワケです。

宿泊できる客室はA館のみ稼働させていて布団はセルフ式。この布団敷きはインバウンドには新鮮なアクティビティの一つになっているとか。英語とイラストで書かれた敷き方の説明書が置かれています。

A館の客室

お風呂はどうしているのか…?はい。A館とB館それぞれに大浴場があり、なんと大浴場であるにもかかわらず貸し切り制です。チェックインカウンターにある予約表に自分の部屋番号のマグネット貼り付けます。しかも二つの浴場は異なる泉質で、自家源泉の新鮮な湯をかけ流しで楽しめます。なんて贅沢なのでしょう!

メインストリート側にある檜風呂

浴場に入ったら先ずチェックしてもらいたいのが浴槽の温度。渋温泉は高温なので水でうめる時間が必要になる可能性があります。インバウンドにとってはカランとシャワーも完備されているので貸し切りであれば然程の問題はないのかもしれませんが、湯船に浸かりたい日本人としては温度は要チェックです(自動の温度管理機の導入を検討しているようです)。そして、渋温泉の旅館に宿泊する楽しみの一つとしては共同湯に入れることですが、渋大湯の鍵も部屋に置かれていますから安心を。

朝食は…?はい。朝も晩も食事は調理も提供もしていませんので、歩いて5分程度のところにモーニングを提供するカフェが複数軒あるのでおすすめしています。

チェックインアウトは無人、布団はセルフ式、食事は近所の飲食店やカフェで、大浴場も貸し切りでセルフ式、そんなオペレーションがインバウンドのニーズと価格とマッチしていて大忙しだそうです。

既存の機能や施設を最大限に活かしながら新しいニーズに対応し、超省エネルギーオペレーションで再生を実現する。ヤドロクが手掛ける物件にこれからも注目です!